このEVバスは、大阪大学と関西電力、阪急バスとの産学連携による最適な充放電システムの構築に向けた実証実験に合わせて導入したもので、2020年4月にプロジェクトがスタート、社内では細見さんを含め、9名のメンバーが集まり特別チームが編成されました。2021年10月から大阪大学の各キャンパスを結ぶ学内専用の連絡バスとして実証実験を開始し、ここで得られた知見を活かして、2022年4月から一般路線での運行を開始、その間ずっと特別チームのメンバーがこのプロジェクトに関わってこられたそうです。
※実証実験終了後もEVバスの運行は継続されます。
2021年9月30日、大阪大学構内で行われた実証実験開始セレモニーの様子
EVバスの走行中は大気汚染物質やCO2を排出しないゼロエミッションとなりますが、営業所内での充電の際にも再生可能エネルギー100%の電力(※)を用いることで、関西のバス事業者として初めてとなる完全ゼロエミッション化を実現しました。
※関西電力の「再エネECOプラン」(関西電力が日本卸電力取引所より調達した、太陽光・水力・風力発電などに由来する環境価値を付加した電気を使用するプラン)を利用することにより、実質的に再生可能エネルギーによる電力として取り扱うことができます。
千里営業所内に設置された急速充電器
千里営業所の事務所横にはEVバス専用のスペースが2台分設けられ、大きな充電器が設置されています。
充電はバスの車体後方にある充電口に充電器のコードと接続して行います。夜間の電力を使用し、約5時間の充電で翌日1日分の走行が可能です。
阪急バスが所有する2台のEVバスで削減できるCO2排出量は年間約66t。杉の木約4,700本が1年間に吸収するCO2に相当するそうです。
災害時は外部給電器を使用するとEVバスから外部へ電力供給が可能。
また、災害などによる停電時には、EVバスは非常用の大容量バッテリーとして使用できるそうです。EVバスの蓄電池から営業所の照明や通信機器への電力を供給できる体制も整えられています。
2021年9月30日、大阪大学構内で行われた実証実験開始セレモニーの際には、会場で使用するマイクやスピーカー用の電気をEVバスから供給しました。
さらに、大阪大学の学生から人気なのが車内に設けられたUSBの差し込み口です。「バス車内でスマホなどが充電できるとは!長距離バスのようですね。」とのお声をいただき、各キャンパス間を移動する際はEVバスを選んで乗車するという学生の方もおられるそうです。
EVバスはモーターを回転させて動く仕組みなので、従来のバスのように加速・減速時の変速によるショックが少なく、走行も滑らかで、乗り心地がとても安定しています。また、従来のバスと違って、停車中でもアイドリングの必要がないため、信号などで停車中でも環境に影響を与えず空調を使用することができます。排気ガス特有のニオイもありません。
こちらはぜひ実際に乗車して体験してみてください。
お客様にも、環境にも、やさしいEVバス。そしてさらに、運転士さんからもEVバスは好評です。加速時のショックをこれまでは運転士さんの運転技術によって軽減していたそうですが、EVバスはスムーズな走行が可能なため、運転士さんからも運転中の負担が少なくなったと嬉しい声が寄せられているそうです。
バスの後部にはEVバス実証実験に関わっている団体の紹介ステッカーを掲出
最後に関西初のEVバスで完全ゼロエミッション化に向けた取り組みの中で最も大変だったことをお聞きしました。
「一番苦労した点は、充電規格の違いです。EVバスの車両は中国メーカーのBYD社製ですが、急速充電器と電力使用量などを管理するエネルギーマネジメントシステムは国内のメーカーのものを使用しています。バス本体、充電器、エネルギーマネジメントシステム、この3つをどうマッチングさせるかという点に苦労しました。協力会社の方とともに、問題点を改善しながらプロジェクトを進め、運行を実現しました。
現在は、関東の事業者さんはじめ各地のバス会社からの見学なども増え、自分たちの知見を共有できるようになりました」と細見さんは言います。
このEVバスの運行は阪急阪神ホールディングスグループが推進する社会貢献活動「阪急阪神 未来のゆめ・まちプロジェクト」の重点領域である「地域環境づくり」につながる活動です。
「阪急阪神 未来のゆめ・まちプロジェクト」の詳細はこちらから。
https://www.hankyu-hanshin.co.jp/yume-machi/index.html
自家用車などは電気自動車、ハイブリット自動車など新商品を目にする機会も多いですが、今回の取材では、路線バスなどでもこれから盛り上がっていくように感じました。運行は平日が14便、休日は12便となっています。EVバスにぜひ乗車してみたいという方は、下記よりルートや時刻表をチェックすることができます。
https://www.hankyubus.co.jp/blog/220407ev.html
お近くにお出かけの際は一度乗車してみてください。
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